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アリアンロッドは楽しいぞぉ!!

by:ばらもす


 『アリアンロッドRPG』の基本ルールブックのあとがきで、デザイナーの菊池たけしは、こんな言葉を言っています。

 十数年におよぶ、我々のノウハウのすべてが、このゲームにはつめこまれている。

 この言葉、誇張ではありません。
 第一印象では、処理が軽いだけの、どこかで見たシステムだとしか思わないかもしれません。
 だけど、その真価は、実際に使ってみるとよくわかります。
 ルールの特徴を端的に言えば、「現場でのノウハウの集合体」。その内容は、まるで良くできた参考書のよう。実際に「使う」ことを意識してまとめられているから、わかりやすく、使いやすい。ルールの流れに乗ってプレイしていくだけで、素のままでは難しいはずの凝ったプレイを知らず知らずのうちに実践し、いつの間にかコツを体で覚えてしまうのです。

 そのプレイ感覚は、新しさと同時に懐かしさを感じさせる、実に不思議なもの。
『D&D』などの古典が持っていた面白さと、『トーキョーNOVA』に端を発するTRPGの新しい流れ(FEAR社のお家芸)が、見事に両立しているのです。
(ついでに言えば、MMORPGのキャラ作成や協力プレイや多彩な戦術の面白さも入っています)
 見事に整理され、使いやすくまとめられた、古今東西のTRPGの「楽しさ」のエッセンス。
 TRPGの達人がつくった、かゆいところに手が届くゲーム……『アリアンロッドRPG』とは、そんなゲームなのだと思います。


「機動性」に富んだシステム

 システム面はシンプルでわかりやすく、判定でダイスを振る回数も少なく、テンポも抜群。処理の軽さに驚かされます。
 キャラクターづくりも、戦闘も、いろいろいじり甲斐があって面白い。スキルの使用タイミングや組み合わせで劇的に効果が変わることも多く、「ゲーム」としても楽しいです。
 背景世界も、なんでもアリ。フットワークがいいというか、後付けで自由に付け足したりできる、「動かしやすさ」が魅力です。
 シンプルで使いやすく、でも単調にならない。応用も利く。
 すべてにおいてフットワークがいい、「機動性」が際立ったゲームです。


「強くなる」という快感


 TRPGに参加する以上、誰だって、活躍できれば気持ちいい。『アリアンロッドRPG』は、そうした「楽しさ」に敏感なデザインをされています。
 スキルを取れば、判定やダメージがダイスごと増えたり。マジックアイテムも、ほんと強力。
 目に見えて効果を実感できるので、成長もお宝探しも、とにかく嬉しい。単純なダンジョンアタックが、むちゃくちゃ楽しい。ドロップ品(お宝)漁りの瞬間の、ワクワク感といったらもう!!

 ただの冒険が、楽しくてたまらない。
 この方面では、『D&D』以来の傑作と言っても過言ではありません。


参加者全員が自然に活躍できる


 『D&D』の何が優れていたって、いわゆる「消える」プレイヤーが出ず、みんなが楽しめるゲームになっていた点でしょう。初心者だろうが上級者だろうが関係なし、プレイ中に特別に意識しなくても、基本4職の棲み分けの妙で、誰もが活躍できる(自然に見せ場が生まれる)ようになっていました。
 この長所、基本中の基本のようでいて、その実、後の国産TRPGの大半が軽視してきた部分でもあります。が、『アリアンロッドRPG』は、この点でも、『D&D』の再来です。
『アリアンロッドRPG』には、いわゆる、「貧乏くじ職」が存在しません。例えば僧侶や盗賊ですが、ただの回復・鍵開けマシンに成り下がらないよう、入念に配慮されています。
 その典型が、僧侶(アコライト)の代名詞スキルの《プロテクション》でしょう。「これひとつで、僧侶の義務は果たせる」ような強力スキルですが、最大の特徴はその効果の高さではありません。システムデザインの秀逸さは、「メジャーアクションを消費しない」点に尽きるでしょう。
『アリアンロッドRPG』のアコライトは、僧侶職としてパーティーに貢献しつつ、自分の手番では、自由な行動選択ができるのです。
 もちろん、スキルレベル・MP面の制約から、本職と同等の強さとはいきませんが、「平行して自分の好きな行動を取れる」のは、大きいです。
  
 更に、《プロテクション》を取ったとしても、スキルレベルにはかなり余裕がある点も、見落とせません。
 というのは、《プロテクション》が高性能であり、これひとつでも僧侶として貢献できるため、余ったスキルレベルは、かなり自由に使って大丈夫なのです。
『アリアンロッドRPG』は、『D&D』のクラス分けの利点を引き継いだゲームであり、各メインクラスには、「求められる役割」が明確にあります。しかし、「求められる役割」を達成するために必要となるスキルレベルは、実は、驚くほど少ないのです。
『アリアンロッドRPG』には、アコライトにおける《プロテクション》のような、それひとつだけでも「クラスに求められる役割」を果たすに足りる、強力な「基本スキル」が、全てのメインクラスに準備されています。
 具体的には、ウォーリアは《バッシュ》、シーフは3種の罠スキル、メイジは各属性の攻撃魔法でしょうか。ただ、メイジだけはパッシブの属性強化も重要で、メイジだけはスキルポイントに余裕が少ない=兼業が難しくなっています(メイジが弱すぎたため上級ルールで緊急補強した結果ですが、当初の予定では、ここまでスキルレベルを食うはずではなかったようにも思えます)。
 これら、「クラスの役割の基礎となるスキル」は、例外なく高性能で、スキルレベルの負担も軽めになっています。これらは、いわば「準自動取得スキル」であり、「全員が取ってくれないと困るスキル」なのですから、誰もが選びたくなるような強さに設定してあるのは、当然のことではあります。
 これら、強力な「メインクラスの基本スキル(準自動取得スキル)」に回すスキルポイントは、大体、全体の半分くらいに落ち着きます。一点集中育成が有利で、レベルアップ毎にスキルは2レベル取得だが同じスキルは伸ばせない(=半分は別のスキルに回さなくてはならない)ルールになっているので、自然にそのあたりに落ち着くのです(上手いシステムデザインです)。
 これは逆に言えば、余った半分を、小技をいろいろ覚えたり、別職業の技を覚えたり、好きに使えるということでもあるのです。
 とにかく、スキルレベルの半分程度でも、クラスのペーシックな能力は得られてしまうわけですから、残りの半分を使って、多彩な味付けが可能になってきます。

 ストレートにメインクラスを極めるにしても、バリエーションはさまざま可能で、自然と個性が生まれてきます。
 例えばウォーリアですが、さまざまな小技を覚えて、七色の変化を持つ業師になるのも良し。
 防御や回避など、第二の売り物をつくることもできます。スキルレベルを食うタイプのスキルが多いのですが、それだけに明確な個性が生まれます。
 もちろん、《バッシュ》以外にも《バーサーク》などのスキルが用意されており、ダイレクトに攻撃力を伸ばすこともできます。
 ここで秀逸なのは、スキルレベルを2倍回したからといってダメージが2倍にはなるわけではなく、せいぜい1.2〜1.5倍程度に収まるところです。《バッシュ》のみで水準の攻撃力までは容易にゲットできる反面、その先からは《バッシュ》以外のスキルに頼るので伸びが落ち、「取らなくても困らない趣味の世界」になっているわけです。
 同じように、小技を沢山覚えたとしても、防御や回避に特化したとしても、「素のまま」のキャラクターが弱すぎない程度に、上手く収まるのです。かといって、「第2の長所」のアドバンテージも失わない程度の、絶妙なバランス取りです。

 また、浮いたスキルレベルをサポートクラスに回して、マルチな才能の持ち主をつくることもできます。
 ここでも、「クラスの基本スキル」の高性能が効いています。
 なにしろ、「クラスの基本スキル」を伸ばしていくだけで、そのクラスの基本はほぼ固まってしまうので、『アリアンロッドRPG』の兼業キャラは、どっちつかずの中途半端には陥りにくいのです。
 ステータスの相性で、兼業しにくい組み合わせというのはありますが、それでも、兼業キャラが弱くなりがちな他ゲームとは一線を画していると思います。上級職のパラディンのマルチぶりなどにも、兼業キャラが強めの設計思想が、良く出ていると思います。
 この結果、『アリアンロッドRPG』では、兼業キャラでも花形になれるのです。
 戦う僧侶や、弓も剣も熟練した戦士、ハガレンのような戦う錬金術師など、なんでもござれ。バリエーション豊かなキャラづくりは、それだけで楽しくなってきます。

 実は、この「兼業キャラの強さ」も、『アリアンロッドRPG』で、盗賊・僧侶職が、パーティーのためのワナ開け・回復マシンという「貧乏くじ」で終わらない点に、一役買ってます。
 特にシーフは、罠関連のスキルの負担が極めて軽いので、盗賊以外の顔でも、相当な実力者になりえるので楽しいです。
 元々、兼業キャラというのは、見た目ほどの活躍の機会はないのです。例えば、魔法と剣の両方が使えたとしても、一度に使えるのはひとつだけ。2つのことができても、戦力は2倍にはなりません。
 そういう意味で、性能の割に負担が軽い「クラスの基本スキル」のおかげで、プレーンな性能までなら容易に得られる仕組みは、かなりのヒットだと思います。その道一本のキャラに大きく見劣りはせず、小技が少ない程度の差で収まるのですから。
 これら「兼業キャラ」と「その道一筋のキャラ」の強さがちょうど良いバランスで整うのが、このゲームの長所でしょう。


 ただし・・・…メリットの代償として、ちょっとクセがついてる部分もあるかも。(リンク先の補考を参照して下さい)


仲間意識が自然に生まれる


 『アリアンロッドRPG』は、パーティー制にとことんこだわっています。これは伊達ではなく、「仲間との一体感」を生み出すための入念な仕掛けの数々に驚かされます。

 まず単純に、仲間を助けるためのスキルが強い!!
 ぱっと見でも、アコライトやバードの技能、ウォーリアですら《カバーリング》などの効果に目を見張らされます。
 このゲーム、自分が強くなるスキルより仲間を助けるスキルの方が強いので、自然とそういうスキルを使う機会が多くなります。その結果、お互いに助け合うシーンが自然と増えていくのです。
 しかも必要とするスキルレベルが際立って少ないため、お手軽に習得できてしまいます。シーフの罠関連スキル、《カバーリング》《プロヴォック》、バードの《ジョイフルジョイフル》《カノン》など、ほとんどが、1レベルで取得できてしまう設計です。

 そして、戦闘まわりの一般ルールもまた、仲間の存在がキーになっています。
 その筆頭は、敵の足止めや《カバーリング》が鍵になってくる、位置取り(エンゲージ)のルール。
 これほど「戦士が味方を守ってくれている」感じが漂うゲームは、稀でしょう。防御の弱いキャラクターをいかにして守るかが、戦いの鍵を握っているといっても過言ではないのです。
 特にアコライトの存在感は絶大で、大抵はリプレイのように戦場の端々までケアする「守りの司令塔」と化していきます。
 また戦士系も、体を張って仲間を守る実感に加え、自然と「位置取り(戦場形成)」を仕掛ける立場にもなるので、自然と仲間を気にかけたプレイに落ち着いていくのです。

「放心」「転倒」などのバッドステータスのルールも、実に秀逸です。
 このバッドステータスは、「次の味方に修正がつく」ので、「次の味方に繋げる」意識を、嫌が応にも高めます。
 ぶっちゃけメイジ系は、ダメージよりもバッドステータス付与の方がアクセントになります。メイジは攻撃対象の選択肢が多く、かつバットステータスによって続く仲間に追撃を促すことにもなるので、「攻撃の司令官」的な存在として、これまた仲間とのつながりが自然に生まれていくのです。
 
 更に、見落としがちな点ですが、「《ボルテクスアタック》《インタラプト》などの回数制限スキル」や「フェイト」の存在も、連携意識を強く生み出しています。
 たとえば、ここで仕留めないと、味方が大ピンチに陥るようなとき。「全力で」「ここでどどめを!」みたいな声が自然に飛ぶので、とても盛り上がります。自分のプレイ経験でも、フェイトを投入した巨大プロテクションで仲間の命を救ったときの記憶が、鮮明に残っていたりするくらいですから。
 戦闘において、強弱をつけられる(メリハリをつけられる)という点は、意外に大きいのです。
 選択ができるということは、判断の余地が生まれるということで、そこに会話が生まれるのですから。

 そんなわけで、『アリアンロッドRPG』の戦闘まわりのルールは、「みんなで戦っている」意識をとても高めてくれるような仕掛けになっています。
 これほど頻繁に、パーティーの仲間とルール的に係わり合い、「仲間に声が飛ぶ」ゲームは、そう多くはないでしょう。
 ボス戦などは、相手の方が圧倒的に強いのが普通なので、パーティーで一致団結して立ち向かう感じが、ひしひしと伝わってきます。
 実際このゲーム、敵の方がレベルが高い状況は、ザラにあります。集団になるほどに強さが倍増していくゲームなので、個々では自分たちよりも強い敵に、平然と立ち向かえるのです。


 更に、「仲間意識を高める仕掛け」の真打、ギルド制があります。
 自分たちのパーティーに名前をつけて、みんなで使うギルドスキルを相談して選び、使う。しかも、ギルド自体も成長していく。
「連携攻撃」など、取り上げるべきスキルは数多くありますが、もはや、詳しい説明は不要でしょう。見事すぎるほどの「仲間意識を煽る仕掛け」です。

 余談ですが、このゲーム、1レベルから一緒に冒険してきたパーティーと、いきなり高レベルでつくった即席のパーティーでは、同じレベルであっても強さがぜんぜん違うことも多いです。
 なぜなら、1レベルから丹念に育ててきたパーティーは、仲間とのそのときそのときの状況を考慮して、パーティーとして必要なスキルを、自然に揃えて来ているからです。攻撃する人ばかりで守備する人がいないとか、個々の技は派出だけど燃費が悪くすぐ枯れる(MPを回復してくれる人もいない)、などのバランスの悪さに陥ることなく、非常に実践的な集団となっていくのです。
 キャラクター単体の強さならば、いきなり高レベルでつくった即席キャラの方が上でしょう。「育てる予定で取ったスキルが、あとで要らなくなったので伸ばさなかった(シグの《バッシュ》のような)」ということがなく、計画的に育てられますから。
 それでも、実際のプレイでは、1レベルから丹念に育ててきたパーティーの方が、強くなるように思います。個の能力が高い寄せ集め集団よりも、お互いのコンビネーションを磨いてきた歴戦の勇士の方が、実戦では頼りになるのです。
 こうした現象も、このゲームの「仲間意識」重視を物語る、面白いものだと思います。


FEAR社のお家芸「物語づくり」への参加ツール!


 『アリアンロッドRPG』は、古典的なTRPGの魅力を備えているとはいえ、「現代的なTRPG」としての魅力がベースになっています。
 シンプルな外見に、惑わされることなかれ。『トーキョーNOVA』に始まる、FEAR社が研鑽してきた「物語づくり」を促すノウハウは、しっかりと受け継がれています。

 まずは、FEAR社のお家芸ともいえる、シーン制。
 これは、簡単に言えば、シナリオを「シーン」で切ることにより、プレイヤーに場面毎の目的意識を植え付け、物語的なメリハリを生み出していく仕掛けです。
 詳細なノウハウの分析はまたの機会にしますが、「起承転結」といった物語的なポイントを明確にすることで、「プレイヤーの意思統一」を劇的にスムーズにしてしまうのです。それどころか、ちょっと慣れてくると、不要な展開を打ち切ったり事前に回避したりなんて真似まで、苦もなくこなせるようになってきます。
『アリアンロッドRPG』のシーン制ルールは、量的にはほんの少しに絞られているのに、効果の方は絶大です。
 基本の「今回予告→ミドルフェイズ→クライマックスフェイズ→エンディングフェイズ」の流れは、惚れ惚れするような無駄のなさ。
 特に『アリアンロッドRPG』のオリジナルルールである「今回予告」は、このゲームの最大のヒットだと思います。
 この親しみやすさ・コテコテのお約束さに、多くのプレイヤーは、真っ先にアニメを連想することでしょう。この安直さこそが、「今回予告」の素晴らしい点なのです。つまり、この「お約束ぶり」は、共通のイメージの掴みやすさ、物語に対するプレイヤー間の意思統一の容易さに、そのまま跳ね返って来るのです。
「今回予告」で、あらかじめプレイヤーに先の展開を提示することで、プレイヤーは「これから始まるのは物語である」ことを自然に意識するようになり、漠然とでも「この話に自分がどう関わっていくか」というイメージを抱くようになります。つまり、最初に「物語の方向性を見せる」ことで、「物語の登場人物になるための心の準備」へと、そうと気づかないままに誘導してしまうわけです。
 同様に、「ここがクライマックスフェイズだ」という宣言も、「格好よく決めるのは、今だ!」という意識を、強烈にプレイヤーに促します。これにより、歯が浮くような決め台詞も飛ばしやすい空気になりますし、回数制限アリの必殺技も、出し惜しみなく使いまくるようになります(技の出し惜しみを警戒するルールも見事で、たとえばフェイトなども、経験点のルールにより、毎回使い切るよう仕組まれていたりします)。
「エンディングフェイズ」も、あらかじめ専用フェイズを設けてあることで、プレイヤーは「ドラマの落しどころ」を意識しながらプレイする仕掛けになっています。
「落しどころ」づくりの意識は、山場や伏線づくりの意識も促すことになり、プレイヤーは「シナリオはひとつの物語」という客観的な視点の元で、シナリオに関わっていくようになります。「エンディングフェイズ」には、単にエンディングを演出するだけではなく、物語全体を逆算構築していく視点を生み出す効果もあるのです。
 これだけで物足りなくなれば、「ハンドアウト」や「コネクション」などの、シーン制を更に進めた形の選択ルールも使用できます。
「コネクション」の登場判定など、PCの登場予定のなかったシーンに乱入するためのルールであり、上手く使えば、劇的に物語を動かすことが可能になります。使い方がムズカシイですが効果は絶大、悪者の密談シーンに「おっと、そいつは聞き捨てならねえな」とか言ってドアの影から登場、なんて真似までできるのです。
 この辺の思想の開祖の『トーキョーNOVA』が、こうしたプレイを大前提として組み立てられた、「可能性莫大だけど制御が難しい」暴れ馬のようなゲームだったのに対し、『アリアンロッドRPG』は、自然な段階を踏んで、身の丈に合ったプレイを導入できるので、かなり扱いやすくなっています。

「シーン制」以外でも、『アリアンロッドRPG』には「物語づくり」をバックアップする仕掛けが張り巡らされています。このゲームが秘める「物語づくり」の適性は、実際、凄いものがあると思っています。
 例えば、逐一「決めるべきところでビシッと決められる」システムになっている点は、見逃せません。
 その筆頭が、「フェイト」のルールでしょう。
 このルールの最大のポイントは、「肝心の場面で、演出が乱数に潰されることがない」点に尽きます。
 TRPGのシナリオは、小説ではありませんから、プレイヤーの「読み」どおりにならない偶然性が必要です。
 しかしそれでも、どうしてもここは決めたい、そうでないと格好がつかない「肝心の場面」というのはあります。まして、『アリアンロッドRPG』の場合は、今回予告のストーリーラインを意識ながら話を進めてきて、クライマックスを宣言し、場合によってはエンディングの青写真を描きながらプレイしているわけですから、「ここだけは」というポイントをモノにできないと、すべての演出が無駄になることすら起こるのです。
 そういう意味で、「フェイト」というのは、実に秀逸なシステムです。
「ここだけは」というポイントは必要十分に守ることができ、しかし、条件の厳しさから適度に場が荒れるので、「退屈な予定調和」というほどの安定は、得られません。結局、「肝心な場面」でしか頼りにできないのですが、それが良いのです。
 また、フェイトは何にでも使えるのも、重大な長所です。
 キャラクターのクラスにおいては、戦闘だけが見せ場ではありませんから、罠外しやプロテクションにも投入できる万能性は、ゲームの懐の深さを生み出すのに、とても効いています。
 その気になれば、「にく」にフェイトを投入して超回復なんて熱い真似まで出来てしまうのです。

 もうひとつ、「決めるべきところでビシッと決められる」仕掛けとして、《レイジ》を筆頭とした、「回数制限系の強力スキル」の優遇があります。
 容易に取得でき、それでいて明らかに強力な効果を持っているのが、この手のスキルの特徴です。
 特に、戦士とメイジの自動取得スキルが、《バッシュ》でも攻撃呪文でもなく、《ボルテクスアタック》《マジックフォージ》である点は、露骨に設計思想が出ていて、感心させられます。
 要するに、「君たちが主役だから、これを使って、格好よく決めてね」ということなのです。
 仮に《バッシュ》が自動取得スキルだったなら、あえて《ボルテクスアタック》を取る人が、どれだけいるでしょうか。戦士としての必須技能としてみれば、間違いなく《バッシュ》の方が重要でしょう。
 しかし、それでは、ゲームの面白さが損なわれてしまうのです。
 なぜなら、ヒーローは必殺技を持っているものなのです。仮面ライダーもスーパーロボットも、みんなそう。安定した強さより、「決めるべきときに決める」、それが物語の主人公の条件なのです。
 だから、花形の攻撃クラスであるウォーリアとメイジには、メインクラスの自動取得スキルにあえて「1回限りの大技」を採用し、全員に、必殺技が行き渡るようにしてあるのです。

 もしかしたら目立たない部分なのかもしれませんが、『アリアンロッドRPG』の凄さは、こういう「実際に動かしてはじめて効いてくる部分」の、洗練ぶりにあるのです。
 いわば、「今までのゲームのおいしいとこ取り」である『アリアンロッドRPG』のルールが、他に類を見ないプレイ感覚を生み出している理由は、こういう「ゲームデザインに対する思想」がしっかりしている点に尽きるでしょう。
 導入されているルールには、無数のプレイ経験に基づいたしっかりとした理由、「人間心理への洞察」があるのです。

 上級ルールブックには、プレイヤーガイド・ゲームマスターガイドという、対人関係についてのノウハウを紹介するコーナーにかなりのページを費やしていますが、その内容の鋭さ、的確さに、感心させられます。プレイは生き物であり、感情の機微を備えた人間が構築するもの、そこを見落として設計すれば、あらゆるルールは絵空事と化します。
 個人的に、『アリアンロッドRPG』の凄味は、一にも二にも、「プレイヤーの心理」を重視したデザインに徹しているところにあると思っています。
 物語を面白くする上で重要な要素、積極的に使って欲しい部分は、わざと相対的に強くしておいて、取り易く、使いやすくする。そうすれば、込み入った理屈抜きでも、プレイがスムーズに流れるようになる。
 このゲームの設計は、「格好良く決めてみたい」というプレイヤーが抱くもっとも基本的な欲望を「素人臭い思考だ」と切り捨ててしまうことを止め、積極的に「充実したプレイに誘導するためのエサ」として利用する、というものです。
「気持ちよく活躍したい」というプレイヤーの本能がプレイの邪魔になる、壊れる原因にしかならないゲームなら、それはゲームデザインが悪い。仲間を立てながら、自分の役割を果たしながらプレイするのが一番活躍できる、遊んでいて気持ちよい、そういうデザインにしておけば、何も強制せずとも、プレイは良い方向へと流れていく。
 この「設計思想」の根底には、「気持ちよくプレイしてもらうことは、ゲーム全体の楽しさを生み出すために不可欠な要素」という、当たり前の認識があるのです。

 現場のプレイの呼吸を知り尽くした「達人」の仕事、「実際に動かしてナンボ」の実践派。
『アリアンロッドRPG』とは、そういう、「生きて、呼吸している」ゲームなのだと思っています。


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